欄干のない橋2016年08月19日

8月15日、東京メトロ銀座線青山一丁目駅で視覚障害者が転落し亡くなった。テレビやラジオからこのような転落のニュースを耳にする度に身体が一瞬こわばる。誰?わたしの知っている人かもしれない、と思う。


当事者である人たちに何度か聞いてみたことがある。
「ホームから落ちたことってありますか?」と。
「あるある、何度もあるよ」、「あるよ、危なかったよ」
わたしが聞いてみた人たちは、総じて「ある」と答えた。

そうか、そうなのか。
そんなに当たり前にあるのか、と驚いた。
全国ニュースになるのは亡くなったり大怪我をしたりした時。
なんでもなかったり軽傷だったり生還したから、この人たちはわたしの前にいて「あるよ」と答えているんだ。

切り立った崖でもなく、足場の悪い山でもなく、ベランダからでもない。毎日何度も使い多くの人が行きかう、日常と切り離せない駅のホーム。
そこからどれだけ多くの人が落ちているのだろう。


欄干のない橋、視覚障害者は駅のホームをそう呼ぶんだよ。
わたしの敬愛する師匠、桜井先生が昔に教えくださった。
そこはわたしのような目の見える者が想像しているよりもっともっと恐ろしい場所に思える。

「危ないですよ、気を付けて」
「お手伝いしましょうか」

誰かに声をかけることはそんなに難しいことだろうか。
今の自分にできることを粛々とやろうと思う。

コメント

トラックバック